知って安心!認知症の特徴と現れるサイン

人生100年時代と言われる日本において、気になってしまう言葉の一つが「認知症」です。

2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると予測されているので耳にする機会も多いのではないでしょうか?

加齢に伴いどうしても記憶力は低下してしまう部分はありますが「これってもしかして認知症?」と考え出してしまうと心配になってしまいます。
認知症の特徴を知ることで実は杞憂かもしれない心配から逃れることができます。
認知症について正しく理解することが、長く心身ともに健康的な人生を送る一歩になるはずです。

認知症についてまずは知ってみましょう。

1.どんなサインがあったら認知症?

ではどんな症状があれば認知症のサインなのでしょうか?

認知症の特徴として次にあげるような初期症状がみられることがあります。
自身、ご家族、大切な人にこのようなサインがないか参考にしてみてください。

~物忘れ~

・何度も同じことを聞いてくる、話してくる
・ゴミの回収日を忘れてゴミを出す日を間違える
・同じものを何度も買ってくる
・料理の味付けが変わる
・置き忘れや忘れ物が増える

~気分の落ち込み・混乱~

・少しのことで怒るようになった
・財布を置いた場所がわからなくなり人に盗まれたと思い込む
・活力がなくなってきた
・趣味や日々の習慣への興味がなくなってきた
・生活がだらしなくなった

~集中力の低下~

・計算や運転のミスが増えた
・本やドラマのストーリーの流れを追えなくなる
・手芸や家事など集中力が必要なものを投げ出すようになった
・約束を守らなくなった
・小銭が増える(計算ができなくなりお札で支払うため)

~時間や場所の感覚が乱れる~

・今の日付がわからない
・さっきまで電話していた人の名前がわからない
・近所でも道に迷ってしまうことがある

物忘れは誰にでもあるものですが、頻度が高くなってきた場合は認知症の初期症状の可能性があります。
また認知機能が低下すると精神的に落ち込んだり混乱したりする頻度が高くなります。
家事が困難になる、道が分からなくなるなど普段の生活習慣が行えなくなることが認知症の特徴です。

また記憶障害を周りに知られたくない気持ちから、取り繕いや作り話が増えてきます。
不安が募ってうつ状態になることや、閉鎖的になって外に出たがらなくなることもあります。

周りも言動に対応することに苦労しますが、本人も焦りや辛さを感じてしまいます。
お互いのためにも早めに医療機関を受診しましょう。

2認知症の症状

認知症の症状には記憶障害、理解力・判断力の低下など(中核症状)と行動・心理症状があります。

~中核症状~

・もの忘れ(記憶障害)
新しいことを記憶できなくなったり、直近で起きたことを思い出せなくなったりします。
体験したことの一部でなく、体験したこと自体を忘れてしまうのが認知症の特徴です。
症状が進行すると以前から記憶していたことも思い出せなくなります。

・時間・場所がわからなくなる(見当識障害)
時間や場所、季節感などの感覚が薄れていき、迷子になったり遠くに行こうとしたりするようになります。
さらに進行すると自分の年齢や家族の存在などの記憶も薄れていきます。

・理解力・判断力の低下
思考にかかる時間が長くなり、同時に2つ以上の事象が重なった状態では相手が誰なのかが分からなくなります。

・身の回りのことができなくなる(実行機能障害)
複数の行動を同時に進められなくなったり同じものを購入したりします。
予想外の出来事が起きたときに対処できなくなるのも認知症の特徴です。

・感情表現の変化
自分が置かれている状況を正しく認識できなくなるため、その場にそぐわない感情表現をするようになります。
例えば「そのような馬鹿なことはあるか」と言われた場合、自分そのもののことを「馬鹿」と言われたと思って怒るような場合があります。

~行動・心理症状(BPSD)~

本人の性格や生活環境、人間関係などの要因が関連している行動や心理面の症状のことを行動・心理症状(BPSD)と呼びます。
分かりにくいかと思うのでいくつか例をあげます。

・認知能力の低下を自覚して元気がなくなる
・自信を失って何もかも面倒になる
・不安、一人になると怖がったり寂しがったりする
・怒りっぽくなる、イライラ、些細なことで腹を立てる
・自分が誰かに狙われているなどと言う(妄想)
・誰もいないのに誰かがいると主張する(幻視)
・自分のものを誰かに盗まれたと疑う(もの盗られ妄想)

症状が進むともの忘れの自覚がなくなることが認知症の特徴なので、探し物に対して誰かが盗んだと思い込んでしまいます。

~軽度認知障害(MCI)~

認知症の症状までは思い当たらない場合でも、加齢によるもの忘れが強すぎるのではと感じられることもあるかもしれません。
その場合は軽度認知障害(MCI)の可能性が考えられます。

厚生労働省は軽度認知障害(MCI)を次のように定義しています。

・年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
・本人または家族による物忘れの訴えがある。
・全般的な認知機能は正常範囲である。
・日常生活動作は自立している。
・認知症ではない。

引用:厚生労働省e-ヘルスネット「軽度認知障害」

つまり病的な意味合いが強くなってしまう認知症と比べ、日常生活に軽微な支障はあっても認知障害はないので大きな問題にはなっていない状態のことです。


しかし認知症の特徴とよく似ているだけあって認知症のハイリスクグループに分類されます。
軽度認知障害(MCI)の状態で適切に対処することで、アルツハイマー型認知症発症を防げる可能性があります。

3.認知症の種類と特徴

 認知症にはいくつかの種類があります。
多くの人が考える認知症の症状はアルツハイマー型認知症の特徴と一致するのではないでしょうか?
実際にアルツハイマー型認知症が最も多く発症しています。
ですが認知症には他の種類もあり、特徴も違うので紹介します。

・アルツハイマー型認知症の特徴

認知症の中でもっとも割合が多く全体の70%近くを占めます。
脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程でおきる認知症です。
糖尿病や高血圧の人はアルツハイマー型認知症になりやすいことが明らかとなり、予防には生活習慣の改善が重要であることが指摘されました。
 症状はもの忘れで発症することが多くゆっくりと進行します。

・血管性認知症の特徴

アルツハイマー型認知症に次いで多く、認知症全体の約20%を占めます。
脳血管障害によって脳の一部が壊死することで発症します。

脳血管障害は生活習慣病が原因で引き起こされる病気です。
そのため血管性認知症を予防するためにも生活習慣の改善が重要です。

症状は障害を起こした脳の部位によって異なるため、一部の認知機能は保たれている「まだら認知症」が血管性認知症の特徴です。
例として歩行障害、手足のしびれ、麻痺、言葉が出にくい、意欲低下、感情のコントロールがきかない等の症状があります。

・レビー小体型認知症の特徴

現実には見えないものが見える幻視や、手足が震えたり歩幅が小刻みになって転びやすくなる症状(パーキンソン症状)があらわれる認知症です。
記憶力や判断力といった認知機能の障害は変動しやすく、頭がはっきりしている時とぼーっとしている時を繰り返しながら進行します。
気分や態度、行動がころころ変わるのもレビー小体型認知症の特徴です。

・前頭側頭型認知症の特徴

脳の前頭葉や側頭葉が委縮して起こる認知症です。
50~60歳代に発症しやすく、多くは10年以上かけてゆっくりと症状が進行していきます。

性格が極端に変わる、万引きや悪ふざけなどの反社会的な行動が増える、柔軟な思考ができない、身だしなみが無頓着になるなど衛生面の管理ができない等の症状が現われるのが前頭側頭型認知症の特徴です。


こんな症状がみられる認知症があるのかと驚いたものもあったのではないでしょうか?原因によって症状が違うのが認知症の特徴です。
 
また若くても脳血管障害やアルツハイマー型認知症のために認知症を発症することがあります。
65歳未満で発症した認知症を若年性認知症といいます。

若年性認知症者の総数は3.57万人と推計されています。

4.まとめ

今回は認知症の特徴と現れるサインについて理解を深めていきました。

どんな症状があれば認知症のサインなのか知っていると早期発見に繋がります。
日常生活に支障をきたす記憶障害があるのが認知症です。
それほどには至っていなくても加齢によるもの忘れが強すぎると感じる場合は、軽度認知障害(MCI)かもしれません。
グレーゾーンの状態の間に適切な対応をすることで認知症の予防につながります。

また認知症の特徴を知ることで、理解できなかった自分の症状やご家族の症状が認知症という脳の病気によるものであることが分かるかもしれません。
その人の本質が変わった訳ではなく、したくてしている訳でもないのかもしれません。


みなさんの漠然とした認知症への不安や疑惑が、認知症の特徴を知ることで次への行動のステップへと繋がれば幸いです。

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