物忘れと認知症の違いとは?気になる症状をチェック
歳をとるにつれて「物忘れが多くなってきた」「芸能人の名前がパッと出てこない」と感じる方は多いのではないでしょうか。
「物忘れ」と「認知症」はどちらも同じ忘れっぽさを意味した言葉ですが医療や福祉の現場では区別されています。
今回はその違いや見分け方、そして自分でチェックする方法について紹介します。
認知症と物忘れの違いは?
認知症とは「いったん正常に発達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすような状態」を指しています。
つまり、「以前はできていたことが段々とできなくなり生活の中で困ってしまう病気」と言えるでしょう。
認知症は原因となる病気によっていくつかの種類に分けられています。
代表的なものとして、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症の4種類がありそれぞれ症状が異なります。
主な症状として、酷い物忘れの他、日付や今いる場所といった自分のいる状況が分からなくなったり、相手が話していることが理解できなくなったりするなどの症状が見られます。
さらに、人によっては人格の変容、徘徊、幻聴や幻覚を感じることもあります。
参考:
日本神経学会「認知症診療ガイドライン2017」
厚生労働省「知っておきたい認知症の基本」
加齢による物忘れと認知症による症状の違い
では、加齢による物忘れと認知症には、どのような違いがあるのでしょうか?
心理学では、記憶の過程が3つの段階に分かれています。
①記銘…音や見えたものに意味をつけて脳に取り込む
②保持(貯蔵)…取り込んだ情報を脳に保存しておく
③再生…保存していた情報を思い出す
加齢による物忘れでは、③再生がうまくいきません。
一方で、認知症による物忘れでは①〜③全てが衰えていくのです。
物忘れと認知症の見分け方はある?
物忘れと認知症を見分けるための具体例
では、具体的にどのような部分で見分けたらいいのか見ていきましょう。
物事の一部を忘れているか、全体を忘れているか
加齢による物忘れでは、物事の1部分が思い出せなくなります。
例えば、昨日の晩御飯で何を食べたか思い出せなくても食べたこと自体は覚えています。
そのため、多くの場合はヒントがあると思い出すことができます。
一方、認知症による物忘れではそもそも自分が何をしたか記憶できないため、物事全てを忘れてしまうような症状が見られます。
先の例と比較して、晩御飯を食べたこと自体忘れてしまい、ヒントも意味を持ちません。
見当識が持てない
日付、季節、今いる場所、周囲に誰がいるのかなど、自分の状況を把握する力を見当識といいます。
加齢による物忘れではとっさに日付が思い出せないことがあっても月や大まかな季節感などは覚えています。
一方、認知症では日付や季節感覚に関して記憶することも難しいため分からなくなってしまうことがあります。
日常生活の動作ができない
私たちは日常生活の中で自然と計画を立てて過ごしています。
例えば、お料理で「ご飯を焚いている間、○○を作るためにあれとこれの下ごしらえをしてしまおう」など考えていますね。
このような計画は記憶力を頼りに組み立てられています。
そのため、認知症が進行して記憶力が衰えると日常的な行動や動作が行えなくなります。
料理の他、お金や薬の管理、着替えやお風呂などに影響が見られることがあります。
物忘れの自覚があるか
加齢による物忘れでは忘れてしまった経験を覚えているので、物忘れの自覚が持てます。
しかし、認知症になると忘れたことを忘れてしまうので、自身の物忘れについて自覚が持てないことが多いです。
自身の記憶が繋がらないことは、自覚が持てない他にも様々な症状として現れます。
例えば、不安を強く感じたり、物盗られ妄想をしたり、食べたはずのご飯を食べていないとい言ったりすることがあります。
その他
それ以外の違いも以下にまとめたので参考にしてください。
認知症がある程度進行すると前述したようなハッキリとした違いが見られます。
しかし、初期段階では判別が難しいことも少なくありません。
そのため、普段の生活の中で物忘れが増えたなと感じた時にはできるだけ早めに専門機関に相談したり、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
自己チェックはできる?
セルフチェック
自分の記憶能力をはじめとした能力が低下しているか、実際にチェックを行ってみましょう。
できれば紙に書いて後から正誤を見返せると正確です。
【問題】
①何歳ですか?
②今日は何年何月何日の何曜日ですか?
③今、自分はどこにいますか?
④100から7を引き算してください。そして、その答えから7を引き算することを何回か続けてください。
⑤知っている野菜の名前をできるだけ多く挙げてください。
【回答】
①実年齢±3歳まで正解 1点
②年、月、日、曜日 それぞれ正しくて正解 各1点
③家や病院など正しい答えで正解 1点
④93、86と正しい回答で正解 各1点
⑤10個以上2点、6個以上1点、5個以下0点
7点以下の場合、能力が低下している可能性が考えられます。
また、簡易的なテストのため正答できていても、人から「前言ったでしょ」などの指摘を受けたり、もの忘れのためトラブルが頻発している場合は要注意です。
予防する方法
頭を使う活動をすると脳に血液が流れて、認知症の予防に繋がります。
友達とのおしゃべりや、読書、パズル、ウォーキングなど無理なく楽しめる活動を取り入れることが大切です。
また、近年の研究で認知症と生活習慣は深く関係していることが明らかになってきました。
特に記憶に関係する生活習慣と言えば睡眠です。決まったリズムで深い睡眠をとるように心がけましょう。
気になる場合は病院へ
これまでの話を踏まえて「自分って大丈夫なのかな?」「親が当てはまるかも」と思う方もおられるかもしれません。
そのような場合には、専門機関に相談しましょう。まずは、かかりつけ医に相談することをおすすめします。
日本では、ほとんどの医師が認知症について一定の知識を持っているので、これまでの病気や経過を踏まえながら診察してもらえることが多いでしょう。
そして、必要に応じて専門機関を紹介をしてもらえます。
かかりつけ医がいない場合は、お近くの脳神経外科、脳神経内科、精神科、物忘れ外来などに相談しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は、加齢による物忘れと認知症の違いを紹介しました。
加齢による物忘れは物事の一部を忘れてしまい物忘れの自覚を持つことができます。
これに対して、認知症は物事のすべてを忘れてしまいますが自覚を持つことは難しいです。
普段から、頭を使う活動や健康的な生活を送ることで物忘れを予防することができますが、気になる場合は、近くの専門機関に相談しましょう。