健忘症とは?自分でチェック

日常において、誰もが経験したことがある「もの忘れ」。

ちょっとしたものなら、ふだんの生活ではごく当たり前で、そんなに気にする必要もないことでしょう。
ですが、あまりにもその「もの忘れ」が頻繁で、生活や仕事などにも影響がでてくると、不安にならずにはいられませんよね?

「もの忘れ」から、記憶障害として認識されている「健忘症」という病気。

もしあまりにも「もの忘れ」以上の状態が現れるようになったら、受診するという選択肢も出てくるかもしれません...ですがその前に、自身で「健忘症」について詳しく知ることも大切です。

診断で「健忘症」と告げられるかもしれない前に、当記事でリサーチ(健忘症チェック)してしまいましょう。
当記事の後半部分では、ご自身で行える「健忘症チェック」も用意してあります。

また、「健忘症」と似通った病気についても列記しています。

ご自身の今の状態が、単に「もの忘れ」なのか?
それとも「健忘症」やそれ以外の病気であるのか?の参考にしていただければと思います。

(セルフチェックは10項目あります)

1.健忘症とは?

健忘症とは、「もの忘れ」が日常の中で頻繁に起こる、記憶障害です。

ふだんの「もの忘れ」より、常軌を逸したものと言えます。

例えば、

「ふだん使っている漢字が思い浮かばない」
「昨日食べたものが思い出せない」
「メガネを置いた場所が見当もつかない」

…などは、よくある「もの忘れ」です。
家族に笑われるていどの、ごく当たり前にある風景ですよね。

ですが、健忘症ではその度合が病的に著しくなります。

短時間や、数日、それ以上の記憶が失われることもままならずあります。
そして、日常生活に影を落としこみます...

そのように、ちょっとした「もの忘れ」から短期的~長期的なまでの記憶障害が「健忘症」と言われています。

(人によっては、その症状も様々なようです)


次に、健忘症は、その時間的な観点で、3つに分類されます。

①前向性健忘

新しい内容を覚えていくことができなくなる、健忘症です。
外部からの受傷などを原因として発症します。
事故などによる外傷で、その時点から後に起こることが、記憶できなくなります。

②逆行性健忘

発症以前の過去の記憶を思い出すことができない、健忘症です。
これもまた、外部からの受傷などを原因として発症します。
逆行性健忘では、原因となる出来事の数時間前までの記憶がなくなる場合と、衝撃を受ける前の記憶がすべてなくなるというように、様々なケースがみられます。

③一過性健忘

前向性健忘症と逆行性健忘症が、ほぼ同時に起こる健忘症で、記憶がなくなる健忘のみが現れるのが特徴です。
症状は30分~8時間前後続きます。(長い場合は24時間ほど)
発症率は、5万人に1人程度と言われています。


では、健忘症の原因は何からきているのでしょうか?

原因は大きく分けて、外的要因内的要因の2つがあります。

➀外的要因
・頭部への外傷性の衝撃によるもの
・脳手術による脳の損傷によるもの
・薬の副作用

その他、脳卒中・脳腫瘍などの脳疾患なども原因になります。


②内的要因
・精神的ショック
・大きなストレス

解離性健忘(記憶障害ではない)の場合は、トラウマが原因となります。

2.他の症状とどう違うの?

健忘症と似ている病気には、認知症、せん妄などがあります。
その違いを見ていきましょう。


➀認知症との違い

まずは認知症との違いについてです。
健忘症と認知症とでは、「忘れていることへの自覚の有無」があります。

健忘症では、忘れてしまったこと自体は覚えています。

たとえば、1時間前に買い物へ行ってきたとします。
買い物へ行ってきたことは覚えていますが、何を買ってきたのかは覚えていません...

それに対して、認知症では、忘れていること自体を忘れています。

先ほどの例でいえば、1時間前に買い物へ行ったこと自体を忘れてしまっていて、もう1度買い物へ行こうとしてしまいます。

また、認知症では人格面での変化がありますが、健忘症ではそのような変化は見られません。

そのほかにも、認知症では、初期症状で「ものが盗まれた!」のような被害妄想が出る場合がありますが、健忘症ではありません。


②せん妄との違い

次に、せん妄との違いについてです。

健忘症は記憶障害、せん妄は意識障害というように、障害の分類で違いがみられます。

せん妄は意識障害の一種で、思考力が低下し、幻覚や幻聴(半分眠っているような寝ぼけた状態)が現れる状態になります。

睡眠中に覚醒することもあり、睡眠のリズムは半ばないものとなります。(せん妄は、急性で一時的な意識障害。)

ですが、健忘症ではそういった幻覚・幻聴・睡眠中の不具合は見られません。


③もの忘れとの違い

次に、「もの忘れ」との違いについてです。

健忘症は、職場や家庭内で役割を果たすことに支障が出ている段階です。

仕事であれば、同じ指示を何度もしたり、顧客との約束を忘れてしまうような状態で、あきらかに業務に支障が生じているような感じです。

加齢による一般的な自然現象とは、少し違いますよね。

また健忘症の特徴に、記憶が思い出せないというものがありますが、「もの忘れ」では、会話などをきっかけに思い出すことが多いです。

記憶が抜け落ちてしまわない、というのが「もの忘れ」との違いになります。

3.健忘症のセルフチェック

ではここからは、健忘症のセルフチェックを行っていきましょう。

以下に10項目あります。該当するものにチェックしてみてください。

01 □ 頻繁にもの忘れをすることがある
02 □ 買い物に出かけ、何を買うのか思い出せない
03 □ 人と会う約束をしても時間を忘れてしまう
04 □ よく探しものばかりしている
05 □ 2品以上のおかずを作るのが難しい
06 □ 言おうとしても言葉がすぐに思いつかない
07 □ 朝のニュースの記憶があいまい
08 □ 最近の特別なイベントが何だったのか思い出せない
09 □ 聞いたばかりの内容をすぐ忘れて聞き返しをくりかえす
10 □ 買い物へ自転車で出かけたのに、置いて歩いて帰ってしまう

1つでもチェックがついた場合、健忘症の可能性があります。
また、10項目中、チェックが多ければ多いほど、健忘症の進み具合が大きいと判断できるでしょう。

ご自身の健忘症チェックの、一つの判断としていただければ幸いです。

4.まとめ

以上の健忘症について、まとめてみます。

健忘症とは、「もの忘れ」が日常の中で頻繁に起こる記憶障害

▶時間的な観点での分類

①前向性健忘
②逆行性健忘
③一過性健忘

▶健忘症の原因

➀外的要因
・頭部への外傷性の衝撃によるもの
・脳手術による脳の損傷によるもの
・薬の副作用

②内的要因
・精神的ショック
・大きなストレス

▶他の症状との違い

➀健忘症と認知症とでは「忘れていることへの自覚の有無」がある
②健忘症とせん妄では「健忘症は記憶障害、せん妄は意識障害」という分類の違い
③健忘症ともの忘れでは「職場や家庭内で役割を果たすことの支障の有無」による

▶健忘症セルフチェック

10項目チェック(健忘症の簡易的なチェックリスト)


これらの健忘症についての詳細をご覧になっていただき、ご自分の不安が該当していないかどうか、チェックしてみていただけるといいかと思います。

それによって、この先にとるべき対策や行動も変わってきます。

なお、専門的なセルフチェックは、新たに受診先などで、専門分野のセルフチェックを受けていただくことをおすすめします。

当記事でのセルフチェックは、簡易的なチェックリストです。
より細かく健忘症のチェックをされることで、健忘症であるかどうかの線引きもできます。

(大切なのは、自分の今の状態を簡単でもいいので、把握することです。チェックは簡易的ですが、参考のためにもぜひ試してみてくださいね。)

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