アルツハイマーと認知症は違う病気?アルツハイマー型認知症を防ぐには

「最近、なんだか忘れっぽくなってきたな。物の名前や人との約束をうっかり忘れてしまうことが増えてきた。まさか、これって認知症では……?」


年齢を重ねて物忘れが目立つようになると、こんなことが心配になりますよね。

2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると予測されています。

しかし、そもそも『認知症』と『加齢による物忘れ』はまったくの別物ということをご存じでしたか?

この記事を読めば、あなたの物忘れが正常な脳が起こしているただの物忘れなのか、認知症発症の黄色信号なのかを理解することができますよ。

認知症には様々な種類がありますが、認知症患者の67.6%がアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症を始めとするその他認知症の特徴を知ることで、自分や周囲の人の危険信号にいち早く気が付くことができます。

また、認知症のリスクを減らすことのできる、日常生活で簡単に取り入れられる認知症予防策についても紹介しています。

アルツハイマーを始めとする認知症について知ることで、自ら積極的に対策をしていきましょう。

忘れっぽいって普通?

年を取ると物忘れが目立つようになるものですが、こういった物忘れと認知症には実は明確な違いがあります。

結論から言うと「ああ、しまった、忘れてた!」と、忘れていたことにあとから気が付いたり、人から指摘されて忘れていたことを思い出すことができれば、それは正常な年相応の物忘れと言えます。

年を取ると、すこしずつ全身の筋肉が衰えていくように、脳機能も徐々に衰えていくものです。
物忘れが増えたり物の置き場所を忘れるのは、若いころのように早く走れなくなったり、高くジャンプができなくなるのと同じこと。
加齢による忘れっぽさは、誰にでも起きる正常な老化現象です。

しかし、アルツハイマー型認知症になると、体験の一部ではなく、体験そのものを忘れてしまいます。
『夕食を食べたことは覚えているけれど、夕食のメニューが思い出せない』といった経験をしたことがある方は多いと思いますが、これは正常な物忘れの範囲です。
しかし、アルツハイマー型認知症になると、夕食を食べたこと自体を忘れてしまいます。

では、なぜアルツハイマー型認知症になるとこのような記憶の欠如が起こるのでしょうか。
アルツハイマー型認知症になると脳に異常なタンパク質が蓄積し、これにより脳委縮が起きることが分かっています。
このように、脳に病変が生じ、その結果脳機能に異常が生じた状態が認知症という病気です。

とは言え、ただの物忘れがアルツハイマーの初期サインのこともあります。
あまりにも物忘れが多くて日常生活に支障が出る場合などは、早めの対策が必要になってきます。

認知症に種類がある?

認知症には代表的なものが4つあり、患者数が多いものから『アルツハイマー型認知症』『脳血管型認知症』『レビー小体型認知症』『前頭側頭型認知症』に大別されます。

中でも患者数の多いのは『アルツハイマー型認知症』と『脳血管型認知症』の2つ。
アルツハイマー型認知症が全体のうちの67.6%、脳血管型認知症が19.5%を占めます。
2つ合わせると90%近くなるため、一般的に認知症と言えばこの2つを指すことが多いですね。

では、認知症発症率のほとんどを占めるアルツハイマー型認知症とはどういった認知症なのでしょうか?

アルツハイマー型認知症患者の脳には、アミロイドβタンパクとリン酸タウタンパクいう特殊なタンパク質が蓄積されていきます。
それが脳の神経細胞を破壊して脳が委縮することにより、食事をしたこと自体を忘れるといった、ひどい物忘れなどの症状が起きます。

アルツハイマー型認知症の初期症状は、ひどい物忘れが最初に目立つようになります。
その他、慣れた場所で道に迷ったり、これまで出来ていた買い物や家事などができなってくるのも特徴です。
そしてこれらの症状は、脳の萎縮が進むにつれて進行していきます。

一方、発症率2位の脳血管型認知症は、脳梗塞や脳出血によって引き起こされます。
障害された脳の部位により現れる障害が異なるのが特徴です。
MRIなどを使って脳のどの部分が損傷したかを調べることで対策ができやすくなるので、脳梗塞や脳出血を発症した際は、担当医師とコミュニケーションを取り、今後の生活についてのアドバイスをもらうことが重要となります。

発症率は少ないですが、レビー小体型認知症は特徴的な症状として幻覚が見えたり幻聴が聞こえるといった症状があります。
家の中に誰もいないのに「女の子が入ってきた」など、事実ではないものが見えるような発言がある場合には注意が必要です。

一番発症率が少ない前頭側頭型認知症の特徴は反社会的な行動です。
理性をつかさどる前頭側頭部の脳が委縮するため、万引きや暴力など、周囲が対応に困る行動が現れます。

これらの認知症については、神経心理学的検査と脳画像検査の結果を見て専門医師が総合的に判断し診断されます。

日常に取り入れられる認知症予防策

アルツハイマー型認知症の原因は、アミロイドβタンパクとリン酸タウタンパク質が脳に蓄積することにより進行する脳委縮です。

脳委縮と聞くと、手の付けられない恐ろしい病気といったイメージを持ってしまいますよね。

しかし、こうった認知症リスクは日常生活を少し工夫するだけでも大幅に発症リスクを抑えることができます。

まず、最大の認知症予防策は生活習慣の改善です。

糖尿病や高血圧といった生活習慣病がある人はそうでない人に比べて認知症発症リスクが2倍にも増えると言われているので注意が必要です。
では、具体的にどのようなことに気をつければ良いのでしょうか。

生活習慣病は、その名の通り適切ではない生活習慣によって引き起こされる病気です。

運動不足や喫煙、過度な飲酒、偏った食生活などがその原因となります。

毎日15分からでも散歩をする時間をつくったり、煙草やお酒を控えたり和食中心のバランスが摂れた食事を心がけるだけでも認知症の発症リスクを抑えることができると言えます。

また、認知症予防には効果的な食材を積極的に摂ることも有効です。

サバやイワシなどの『青魚』には、健康な脳機能の維持に必要なDHAやEPAといった不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

また近年では地中海沿岸に住む人々の食生活が脳に良いという研究結果が出ています。
オリーブオイルや果物、野菜を積極的に摂る『地中海食』が、脳の健康維持に効果的と言われています。

その他にも、手軽に毎日取り入れられる食材として注目が集まっているのが『コーヒー』です。
コーヒーの摂取量が多い高齢者は認知症の発症リスクが低いという研究結果があります。

では、なぜコーヒーが脳機能維持に効果があると言われているのでしょうか。

コーヒーに含まれる苦みであるフェニルインダンという成分は、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβタンパクが脳に蓄積するのを防ぐ作用があると言われています。

その他にもコーヒーに含まれるポリフェノールの一種クロロゲン酸は、強い抗酸化作用を持っているため、脳機能を衰えさせる原因である活性酸素を取り除き脳の老化を防止することによって、認知機能の維持・向上が期待できます。

また、コーヒー豆に含まれるトリゴネリンという成分は脳神経細胞の活性化を促す効果があると言われ、その有用性が医師を中心に今注目されています。

コーヒーの摂取目安は、1日3杯程度が適量です。
コーヒーに含まれているカフェインは適量であれば問題ありませんが、過剰摂取は交感神経を刺激するので注意しましょう。
コーヒーからカフェイン成分を除去した、デカフェローカフェインコーヒーでも有効性は変わりません。
遅い時間にコーヒーを飲むと夜眠れなくなる人は、14時以降はデカフェやローカフェインコーヒーを楽しむのも賢い方法ですね。

まとめ

医学がめまぐるしく進化していますが、現代はアルツハイマーを改善する薬はあっても、治療してくれる薬はまだありません。

認知症について正しい知識を持ち、できる対策をコツコツと続けていくことが人生100年時代を笑顔で過ごせる秘訣と言えそうです。


高齢化という言葉が独り歩きして社会問題となっていますが「現在の生活に満足していますか?」という質問に対し、実は年齢が上がるほど「満足している」と答える人の割合が増えるという調査結果があります。

不安を抱えていた高齢期を無事に送れている安心感は、私たちに幸せを感じさせてくれます。

認知症のリスクに正しく備えることで、これからも不安のない生き生きとしたシニアライフを存分に満喫していきたいですね。

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